CMの音楽制作について

CM音楽制作の流れ

クライアントの欲しい曲を作るためのブリーフィング


CM音楽の制作というと、クライアントはいろいろなことを考えているはずです。「曲のムード」「~というヒットソングっぽい雰囲気」「いつ頃できあがるのか?」など、クライアント側では多くのことを頭に描いているはずです。そのため、CM音楽を制作する側は、まずクライアントのニーズをつかまなくてはなりません。
 
ブリーフィングでは、雰囲気、気分や感情、音楽のジャンル、ビデオ、ナレーターや出演者といったニーズを把握します。コマーシャルでは、クライアントの商品やサービス、会社のイメージというものを表現しなければなりません。クライアントがCMにより到達したいゴールを頭に描き、それを達成することが目標です。ブリーフィングはそのための第一歩であり、もっとも重要なプロセスのひとつです。
 
クライアントの中には、すでに彼らのイメージするサンプル音源を用意していることもあります。サンプル音源は、CM音楽のプロデューサーにとって、この上なく参考になるものでしょう。
 
このような場面では、CM音楽プロデューサーとして、知識や経験の引き出しが多くあると有利です。多くのクライアントは、レスポンスよく提案を返してくれることで期待、信頼感といった感情を抱きます。プロジェクトの初期段階で、信頼関係を築けるようであれば、この後のプロセスもスムースに進められる可能性が高まります。クライアントがイメージしているものを理解し、即時に的確なアイデアを提案することは、忙しいクライアントにとってうれしいことでしょう。

 

 クライアントの欲しい曲を明確にするためのリサーチ


ブリーフィングの後は、クライアントの欲しい曲を実現するためのリサーチです。クライアントからの参考音源があれば、この音源にあるリズムや響きなどの要素を、より深く聴いてみます。何か「ノリ」を発生させる要素や「繰り返し」など、人々の心をくすぐる要素を、過去の経験や知識からあぶり出します。
 
このような作業を通してあぶり出したものが、実際のCM音楽で核となるものです。それが人々の心にうまく入っていけるように、曲のキー、楽器、リズムを組み立てていきます。CM曲の全体像が把握できれば、この段階はパスしたと言えます。
 
CM音楽の制作は、他の音楽制作に比べると、比較的自由です。さまざまなアイデアを試しつつ、とにかく人の心を動かす音楽を作ることに集中します。ただ、さまざまなアイデアを試すことは必要ですが、多くを詰め込むことはできません。CM音楽は、なるべく早く回転させてシンプルな曲を目指しましょう。

 
  •  CM音楽のプロダクションステージ
プロダクションステージは、通常、曲のベースとなるパートを作ることから始まります。CM音楽は15秒から30秒程度のものがほとんどです。シンプルなコード進行の繰り返しで構成されている曲がほとんどです。人の気分であるとか感情といったものは、わかりやすいコードの流れに影響を受けやすいものです。シンプルなコード進行、リズムとベースラインはCM音楽の根幹です。
 
商品やサービスについてのメッセージを伝えるのは通常、メロディーラインの役割です。キャッチーなメロディーライン、そしてボーカリストがいるのであれば、キャッチーな歌詞の存在が大切です。
 
これらがクライアントの「欲しい音」という条件を満たしているのであればパーフェクトですが、コトは多くの場合、そうかんたんではありません。通常の音楽を制作するときと同様に、CM音楽が、ひとつの音楽として響いていない場合もあります。シンプルなCM音楽にとって、心に響かない要素を排除することは大切です。

 
  •  クライアントにできあがったCM音楽を聴いてもらう
プロダクションステージが終わったら、実際にクライアントに、できあがったCM音楽を聴いてもらうことになります。最初のブリーフィングがしっかりとできていれば、クライアントの要求にかなり近い音楽に仕上がっているはずです。
 
ここで大きい修正やレコーディングのやり直しが行われるようだと、プロジェクトの初期段階に何らかの問題があった可能性があります。
 
おそらく細かい修正をしなければならない場合が多いと思います。もしかしたら、あまりにも曲のできが良かったため、さらなるアイデアが出てきてしまった…ということもあり得ます。とにかくクライアントが満足いく出来映えに仕上げることで、ひとつのプロジェクトは終了します。
 
著名なCM音楽のプロデューサーは、経験が豊富であると共に、クライアントが頭に描いているイメージをつかみ、さらにそのイメージに広がりを出すことに長けています。また、プロジェクトに必要な人材を集めることにも、同様に長けています。
 
音楽はクリエイティブなものですが、だからといって、すべて自由にやればいいというのは間違いです。ビジネスとしての音楽には「プロセス」があります。プロセス通りに進めることで、スムースにいい音楽を作ることができるのです。