CMの音楽制作について

CMの音楽制作について

CM音楽制作のプロは音作りだけのプロではない


テレビのコマーシャル制作には、限られた時間の中で、宣伝する商品やサービスが「何」なのかをターゲットとなる層に伝えることが求められます。これは歌詞のある曲にも、歌詞のないインストゥルメンタルの曲にも当てはまります。CM音楽は元々、作曲家の人たちが自ら作り上げたビジネスです。日本の、たとえば小林亜星さんのような有名な作曲家が、
 
ただ作曲していても食べていくことはたいへんだ
 
との思いから、テレビのコマーシャルに使う音楽の仕事を受けるようになったことが始まりのようです。
 
15秒という短い時間であっても、広告主からの要求は厳しいものがあります。単純に音楽を作ることのできるアーティストはたくさんいますが、15秒で伝わる音楽を作るには、音楽を知っているだけではなく、広告とその制作の流れにも、深い理解が必要とされるのです。
 
音楽は言語であり、その言語は、特にCMの場合、限られた時間内に、多くのことを伝えることが要求されます。商品やサービスのイメージ、アピールしたい年齢層など、あらゆる要素が考慮され、伝わるCM音楽が世に送り出されます。かんたんな仕事ではありませんが、通常の音楽制作よりも多くの人に届く音楽のため、大きなやりがいのあるミッションです。

 

 CM音楽はそれだけでひとつの業界


CM音楽は、日本の音楽制作業界の重鎮である小林亜星さんや、いずみたくさんが築き上げてきた世界とも言えます。
 
小林亜星さんは「レナウン(レナウンワンサカ娘)」「サントリー(サントリーオールド)」「ファミリーマート(あなたとコンビに、ファミリーマート)」「積水ハウス(積水ハウスの歌)」など、数え上げたらきりがないほどのCM音楽を手がけています。
 
小林さんは、これでもかと言うほどたくさんの歌謡曲、アニソンを作曲していますが、CM音楽にも、多くの史上に残る名作があります。そのキャッチーなメロディーと歌詞は必聴ですので、YouTubeなどで検索してみてください。
 
いずみたくさんも「明治製菓(チョコレートは明治)」「日産自動車(愛のスカイライン)」「ハウス食品(バーモントカレーの歌)」など、こちらも豊富なCM音楽ラインアップですね。いずみさんは「いい湯だな」「見上げてごらん夜の星を」などの作曲家としても知られていますが、CMの世界でも小林さん同様、数多くの名作を残しています。
 
彼らのような音楽の巨人は、実はCM音楽を専門に扱う会社を持っていました。このような会社は、仕事を受けるところからプロデュースまでを、ひとつのプロセスとして請け負っていました。現在の日本の音楽プロダクションは、彼らがやっていたビジネスの発展型だと言えるでしょう。
 
現在、テレビ業界はインターネットの発展・普及に押されて視聴者数も減っていますが、それでも多くの家にはテレビがあり、商品やサービスの広告戦略上、無視できるものではありません。日本は約1億の人口を持つ国ですが、CM音楽はこの1億人にアピールする音楽です。年齢層を選ぶ歌謡曲とはまったく違うセンスを要求されるビッグビジネスなのです。
 
もちろんCMにもターゲットがありますので、必ずしも1億人にアピールする必要はありません。しかし、クライアントの要求に応じて「欲しい音」をイメージし、この歌をうたえるシンガーを手配したり、ミュージシャンを手配したりという仕事もこなさなければなりません。
 
CM音楽の制作は、受注からプロデュースまでを一貫して行うことも多くなっています。そのため音楽制作に関する経験や知識だけではなく、人脈作りのためのコミュニケーションスキルなどの能力が必要とされる部分が増えてきています。


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